テキスタイルデザイナー/ゼンタングル認定講師(CZT) 成冨史絵さん

インタビュー

LakitスタッフOです。今回は、クリエイターさんの素顔をご紹介する、インタビュー企画第2弾!

既に活躍されているプロのクリエイターの方って、「最初から描いたり作ったりするのが上手な、自分とは遠い存在」に思えていませんか?

プロの方が、いかにしてクリエイティブなことに取り組み始めたのか。新しく何かを始めるきっかけは、どんなところにあるのか。

レッスン動画ではなかなかうかがい知ることのできないクリエイターさんの人柄や、いままでのご経験を詳しくご紹介したいと思いますので、ぜひお楽しみください!

 

撮影中のクリエイターさんに直撃インタビューして、Lakitで新しいクリエイティブを始めたい方への励ましになるエピソードや気づきになるお話を、いろいろと聞いてきました!

スタジオ潜入👀

スタジオでは、テキスタイルデザイナー/ゼンタングル認定講師(CZT)として活躍されている、成冨史絵さんがLakitで5つ目のレッスンを撮影中📷

撮影開始直後は緊張されているようでしたが、だんだんとエンジンがかかって慣れたご様子に。

和気あいあいと順調に進む中、直撃インタビューをさせていただきました✨

成冨さんインタビュー

成冨さんはテキスタイルデザイナー/ゼンタングル認定講師(CZT)としてご活躍中です。とてもハキハキとお話上手で話題も豊富な方なので、インタビューもずっと楽しい雰囲気でした♪

 

美大卒業後、ご自身の力でお仕事の道を切り開き、やってみよう!という気持ちでいろいろな挑戦を続けているカッコイイ成冨さん。

普段のお仕事や、クリエイティブに対するお気持ちやルーツなど、 早速いろいろと聞いてみました!

クリエイティブな活動を始めたきっかけ

スタッフO:美術大学のご出身とおうかがいしました。”美大出身”というと色眼鏡かもしれませんが、小さなころから絵を描いたり、何かを造るのが得意だった人というイメージがあります。幼いころからアートとかかわりがありましたか?

成冨さん:そうですね(笑)

父がイラストレーターだったことが大きいかもしれません。仕事というのは一日中家で絵を描くことだ、と思っていたころがありました。父の仕事部屋には絵を描くのに必要な道具がすべてそろっていて、子供のころはこっそり忍び込んで道具を借りて使ったりしました。

勝手に借りると怒られたのですが、父はどこかうれしそうでもありましたね。「これを使ってみたい」と言えば喜んで貸してくれました。

スタッフO:なるほど。幼いころからいろいろな道具に触れる環境が身近にあったのですね。打ち合わせをしていても成冨さんは道具への愛が強いといいますか、いろいろな道具の違いについて熱心にお話しくださいますよね。

成冨さん:そうですか(笑)?父から「道具はきれいに手入れしなさい」と教えられたことが影響しているかもしれません。

父とは面白いエピソードがいくつもあるのですが、特に印象深いことがあって。

普通は子供が描いた絵ってどういうものでもほめてくれるじゃないですか。でも父はプロのイラストレーターだったので、私が ”プロに見られるのは恥ずかしいな” と描いたものを隠したことがあったんです。そうしたら、「隠すくらいなら描くな」と。

スタッフO:それは厳しいですね。アートに関しては、子どもであってもプロとして向き合われていたのですね。

成冨さん:そのことがあってからは、どんなに下手でも堂々と描くようになりました。どんな場所でも、誰に見られても恥ずかしがらずに描けます。父はクリエイティブの師匠という感じですね。アートに関しては厳しい面もありますが、作品の個性や人間的な部分は今でもほめてくれます。

美大への進学

スタッフO:絵を描くのが好きなまま、美大進学を決めたんですか?

成冨さん:中学生の時は、普通の学校に進学すると思っていました。環境省に入りたいなと思っていたんです。

スタッフO:環境省ですか?すごくピンポイントですし、絵を描くこととは全く違う分野に思うのですが、どうしてですか?

成冨さん:ずっと水泳を習っていたので、泳ぐことが仕事になればいいなと。

あるテレビ番組で、どこかの海をダイバーが水質検査しているところが映ったんですよ。それが環境省による調査だと紹介されていたんです。ダイビングがとても格好よく見えたのと、泳ぐことを仕事にするなら、これしかないと思いこんだんですよね。今のようにインターネットも普及していなかったので、情報もあまりなく。この仕事がしてみたい!と思って(笑)

スタッフO:そうだったんですね。やりたいことが水泳から絵を描くことに変わって、美大への進学にはどうつながっていくのですか?

成冨さん:水泳はすごく好きだったので、高校生のうちにプールの監視員や水泳の先生のアルバイトをして、それで満足したこともあったのかな。美術はずっと好きでしたし、姉も美術系に進んだので、私の家では美大への進学がごく普通のことだったんです。

具体的に美大を目指したきっかけは、横浜美術館のライトアップでした。それがすごく素敵で、これを仕事にしてみたいと思ったんです。

それで、大学はムサビ(武蔵野美術大学)の空間演出デザインというのを第一志望にしました。ムサビを選んだのは、ファッションも好きで、ファッション科もある大学が当時はムサビだけだったからですね。空間演出とファッションは、学科が隣同士だったので刺激を受けられると思ったのも理由の一つです。

 

テキスタイルデザイン

スタッフO:なるほど、そうやって美大へつながったんですね。今のお仕事はテキスタイルデザインというファッション系ですが、ここにはどうやってたどり着いたのですか?

成冨さん:大学3~4年のころに、友人と輸入雑貨の店を始めたんです。常連のお客様から、「オリジナルのものを作って売ったらどう?」と言っていただいて、 ”マッシュマニア” という名前でオリジナルのTシャツなどを作るようになりました。当時インディーズが流行していて、作ったものをデザインフェスタへ売りに行ったりして反応を見たりしましたね。

大学卒業してすぐに、セーレン株式会社がテキスタイルデザイナーを探しているという話があって、デザインを売り込みに行きました。業務委託という形でお仕事がスタートして今に至ります。なので一度も就職したことがなくて、ずっと個人事業主なんですよ。

スタッフO:大学で学ばれた空間デザインだけでなく、もともとあったファッションへの興味が現在のお仕事につながって、今はマッシュマニアというブランドの雰囲気、空間を演出しているのですね。大学時代に取り組まれたことがいろいろとつながっていて、すごいご縁だと思います。

ゼンタングルとの出会い

スタッフO:もう一つ、ゼンタングルとの出会いはどういうものだったのですか?

成冨さん:これはねー、マッシュマニアの同僚が最初に見つけてくれたんですよね。「あなたのパターンに似ていて、ゼンタングルっていうのがあるみたいだけど知ってる?」って。

実際にやってみたら、これがすごくよかったんですよ。

当時、ファッション業界全体が苦境といわれていて、私も「自分にしかできないことをやってみよう」と、ちょうど何か自分にとっての転換点を探している時期でした。

テキスタイルのデザインは、スタッフみんなの考えを形にしよう、という使命感を持って行っているので、パターンに間違いや失敗があったらある程度進んでいても戻って直さないといけないし、締め切りもあってプレッシャーを感じたりしんどい時もあります。

ゼンタングルはそれがないんですよね。間違えてもそれを直すのではなく、それを活かしていく。テキスタイルデザインでは満たされない創作意欲が満たされる感じがありました。

それで早速、ゼンタングルの認定資格をアメリカに取りに行ったんです。

取ったばかりの時は絵を誰かに教えるというのも初めてだったので、「まずは100人に教えてみよう」思い、友人や家族に体験してもらいました。100人教え終わってからは少し自信もついてきたので対面のワークショップを始めて、2019年にはデザインフェスタでワークショップを開催しました。

今はコロナの影響で状況が変わっていますが、オンラインで多くの方に教えられるようになったり、そこからLakitとのご縁もありました。

スタッフO:ゼンタングルを知った時、ご自身では自分のパターンと似ていると思われましたか?例えば、どういうところ?

成冨さん:ゼンタングルを紹介してくれたその人は、細かいパターンが繰り返し出てきて、オーガニックなモチーフを描くという点が私の絵に似ているって紹介してくれました。たしかに、私の図案も植物とかオーガニックなモチーフを描いているので、そういうところは似ているなと思いました。

インスピレーションの源は?

スタッフO:そういう出会いだったんですね。テキスタイルデザインと、ゼンタングルと、創作意欲の話が出ましたが、柄やデザインのインスピレーションはどういうときに湧くんですか?成冨さんでも、アイデアが湧かなくて困るっていうことはあるんですか?

成冨さん:テキスタイルデザインはシーズンごとにテーマがあって、それに合わせて何とか絞り出す(笑)という感じですね。旅行が好きで、コロナ禍前は旅行に行ってインプットしてきたことが活かされていたように思います。

今は図書館で景色の写真集を見たり、映画ですかね。外に出かけていろいろ目にすることで刺激になっています。よく見る本は、イスラム系の建築物やアジア、特にタイやインドなどの宗教美術に関するものですかね。「どうして私はこれがいいと思うんだろう?」と自問自答しながら、色合いやフォルム、質感などヒントにしています。

スタッフO:今までに行った中で、一番インスピレーションを受けた、良かった旅行先はどこですか?

成冨さん:インスピレーションをもらったという点では一番印象に残っているのはウズベキスタンですね。ほぼ砂漠なのですが、ブルー系のタイルの感じに、すごく創作意欲をかき立てられました。植物をモチーフにした模様も素敵なんです。

スタッフO:ウズベキスタンに行く機会って滅多になさそうですが。どうして行こうと思われたのですか?

成冨さん:友人が車を使ってヨーロッパまで行く、という旅行をしたのですが、途中で車を盗まれるトラブルに巻き込まれたんです。その時に食料など持ってきてほしいと頼まれて、その合流場所がウズベキスタンだったんです。結局友人に直接会うことはできなかったのですが、現地のNPOを通じて荷物を渡すことができました。行く前は心配とドキドキでしたが、結果的には素敵な街に巡り会えてとても楽しい旅行になりました。

スタッフO:思いがけず波乱万丈な旅の思い出がお聞きできました(笑)。もし自分だったら警戒心が勝ってしまってそんなに楽しめないかもしれないと思ったのですが、そんな中でもしっかり楽しめる成冨さんの度胸がすごいです!ゼンタングルにおけるインスピレーションの受け方も同じですか?

成冨さん:ゼンタングルに関しては、実はパターンの組み合わせがある程度決まっているので、アイデア出しにインスピレーションはそれほどいらず、そこまで苦戦することはないんです。

スタッフO:テキスタイルデザインとゼンタングル、同じパターン柄といっても、全く異なる創作過程が、成冨さんの中で創作欲を満たしあう関係になっているのですね。

最近興味があること、新しく始めたいこと

スタッフO:「自分にしかできないことをやってみよう」と精力的に活動の幅を広げておられる成冨さんが、新たに興味をもっていることや始めたいことは何かありますか?

成冨さん:なんだろう?うーん(悩みながら)

「ビーチコーミング」って知ってますか?

スタッフO:わからないです!ビーチ、、、潮干狩りみたいなことですか?

成冨さん:砂浜に流れ着いたもの、例えばシーグラスとかを拾ったりすることなんですけど、以前、富山の海岸で翡翠(ヒスイ)を探したことがあるんです。残念ながら見つけることはできませんでしたが、ただ単に拾う時間が宝さがしみたいで楽しいんです。いつかもっと時間をかけて、じっくりビーチコーミングしたいですね。

スタッフO:石もお詳しいんですね!

成冨さん:富山で体験したものは観光協会が企画しているもので、拾った石の鑑定をしてくれるんです。「これは絶対に翡翠だ!!」と思って何個も石を拾って鑑定してもらったんですが、きれいだと思って拾ったものは全部石英でした(笑)

場所によっては砂浜の貝やサンゴを拾って持ち帰ることが禁止されているんですよ。持ち帰らなくてもいいので、ただ静かに砂浜を掘りたいですね。意味のないことに時間を使うのって最高の贅沢じゃないですか?

掘って探している姿は地味ですけどね(笑)

はまっていること、集めているものはありますか?

スタッフO:成冨さんがはまっていることや、好きで集めているものは何かありますか?

成冨さん:もちろん、ゼンタングル!あとは、世界各地の ”栓抜き” を100個以上集めています。もともと壁にコレクションとして飾っていたのですが、数が増えて重みが出てきたので今は箱に入れて保存しています。

スタッフO:栓抜きというと、ワインのコルクを抜くやつですか?

成冨さん:いえいえ、ビンの王冠を取るやつです。インドやウズベキスタンではなかなか町中に売っているのを見かけなくて、食事のために入ったお店で店員さんが使っているのを売ってもらったこともあります。現地の独特のデザインが面白いんです。

壁一面の栓抜き
栓抜きをゼンタングルの模様で装飾したもの

リフレッシュ方法はありますか?気分転換になるものは?

スタッフO:最近は海外に行くことが難しくなりましたが、リフレッシュ方法や気分転換になるものはありますか?

成冨さん:これも、ゼンタングルですね(笑)あとは、1年前から猫を飼い始めまして・・・猫を触っているだけで癒されます。

長期の旅行はなかなか行けないのですが、息子と日本全国を巡ろうと、「47都道府県制覇の旅」にチャレンジしています。息子が生まれてから今までの11年間で38都道府県を巡りました。こちらもコロナ禍で滞っているのですが、家族で旅行の計画を立てているだけでワクワクしますし、リフレッシュできます。

体を動かしたいとも思って、水泳をまた始めることも考えたのですが、通いやすいところのプールが混んでいるので・・・こちらはちょっと保留です。

好きな文房具は?

スタッフO:では最後の質問です。成冨さんのお気に入りの文房具を教えてください。

成冨さん:三菱さんの色鉛筆880が好きですよ!愛用しています。硬すぎず、柔らかすぎず、発色も良くて使いやすいです。お値段が手ごろなのにこのクオリティーはスゴイです!海外の方にも必ずおすすめしていますよ!

色鉛筆 No.880

スタッフO:ありがとうございます!三菱鉛筆の商品以外だとどうですか?

成冨さん:最近インクの魅力に気づきました。それで、家族が記念日にプレゼントしてくれるんです。結婚記念日や母の日とか。

成冨さんが持っているのは結婚記念日にプレゼントされたインク

スタッフO:素敵ですね!インクに沼り始めたきっかけは何だったのですか?

成冨さん:沼り始めるっていいですね(笑)。沼り始めたきっかけは、やはりゼンタングルですね。本来ゼンタングルは白黒なんですが、カラーを加えることでまた違った面白さが出てきます。インクならではの滲みを加えることに沼ってます。

インクは、昔、父の仕事道具を使わせてもらっていた中でも、 ”使ってはいけないゾーン” に置かれていて触らせてもらえなかった道具なんです。おそらくインクの色が混ざってはいけないからとかそういう理由だと思うのですが。

ちいさい頃はイラストレーターの永田萌さんのインクを使った作品が好きで、昔からあこがれの道具ではありました。ただなかなか使う機会がなかったんです。

ゼンタングルに色鉛筆で色を加えることから始めて、他にも使える画材はないかな?と思っていた時に、小さなビンにちょっとだけ入ったインクを見つけて。こんなにきれいなのがあるんだ!と。

色鉛筆で出せる柔らかい風合いとはまた違ったインクの魅力に一気に引き込まれました。

インクで着色したゼンタングルを見せていただきました
インクのにじみが印象的なゼンタングル

スタッフO:インクの中で一番お気に入りの色はどれですか?

成冨さん:最近の一番のお気に入りは息子からプレゼントされたこの色ですね。「ミントソーダ」、緑がかったすてきな水色です。

息子さんからのプレゼント、一番のお気に入りインク「ミントソーダ」色

スタッフO:新しい創作体験を始めるとともに、道具への愛も増していらっしゃるご様子でした。とても面白いお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

 

今後に向けて

成冨さんは「テキスタイルデザイナー/ゼンタングル認定講師(CZT)」としてご活躍中です。

細かな変化を楽しむ日常って、素敵ですよね!

素敵な偶然や予想外の刺激を求めていろいろな場所に外出して、実際に自分の目で見てみるという、日々の生活からのインスピレーションの受け方は、すぐにでもまねしたいです。

今後の成冨さんのレッスンもとっても楽しみです。成冨さん、インタビューありがとうございました。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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